年始の視聴

1/1 マヂカルラブリーno寄席

伝説となった一昨年の初回を見逃したことは未だに後悔しているが、それでも3回目となる今年は昨年よりも面白さが増していると確かに感じられるものだった。
おおよそ観客との共犯関係の中で面白さを成り立たせる構造を持ったネタを得意としている演者たちが集い(勿論それがなくても笑いが取れる手練もいる)、無観客・客席には他の演者のみという環境の中でネタを演じ、野次という切り口で普段は見ないふりをしているその共犯関係を崩し構造を暴露する、というのがこのイベントの面白さの源だ。しかし今年はそれに加え、敢えてその共犯関係を悪意のある形で粒立たせるという盛り上げ方も生まれたことでより笑えるものになっていた。(ゴー☆ジャスのネタの時だけ全く荒れずに進行した結果何も起こらないということも含め)演者と観客の相互のアクションによってステージは成り立つという当然の事実を改めて思い出す機会が元旦に設けられているというのは、実は我々にとって幸福なことなのかもしれない。
ステージ上の不条理と客席からの辛辣な批評が全く交わらないかと思ったらたまに合流するタイミングがあるのが逆に怖いランジャタイ、悪意を向けられても怒らないとかそういう理由でのみ呼ばれてない?と思わされるTHE GEESE(本人たち発信の場面で笑ったところはないけどそれ以外の全てで腹を抱えた)、自分が批評の対象になるのは巧妙に避けるのか......と一瞬冷めそうになったけど最早『アウトレイジ』の西田敏行だろというレベルの年輪顔芸で地力を見せつけてきた永野がベストアクト。

 

1/3 このテープもってないですか?

OAは昨年末だったが年始に全3回を一気に視聴。昨年の『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』と同じプロデューサーによる番組と知り期待して見た。
考察の余地や全体的なムードという点では今作に軍配が上がるが、個人的には『〜奥様ッソ』のストレートに嫌な気分にさせられる下世話さが無くなった分、シリアスな笑いとも取れてしまう箇所がちょくちょくあるなと思ってしまった(それが幼稚で無粋なものの捉え方と言われると返す言葉がないが)。モキュメンタリーのさじ加減は難しい。

 

1/3 ダイヤモンドno寄席

マヂラブ寄席の悪ノリが、プロの芸人の矜持によってある種のお笑いにおけるイタさを断罪する高潔なアクションとも取れるものだとしたら、このイベントのそれはただただ下らなくて生産性がなく、それ故に最高さをもたらすものであった。主催自らのものの含め各演者の賞レースでの結果をあげつらう演出もそういった権威への拗ね気味の反抗に思えてくる。
その場にいるいないに関わらず他芸人のネタの引用が繰り返されこの流れが誰によって始められたものなのかわからなくなっていく様は内輪受けの最たるものであるが、鍋でひたすら食べ物が煮込まれていくようにドロドロにノリの境目が分からなくなって終わったこの体験の視後感は「面白かった」以外にありえない。翻弄され続けたガクが起床するというオチからして演者側はこのことに自覚的であったのだろうし、時折姿を見せた山口コンボイは悪夢の中で一服の清涼剤を求めた我々が無意識のうちに出現させた存在だったのではないかと滅茶苦茶なこじつけをしそうになってしまった。

P.S.
前記事の「2023年に心がけたいこと」にて「zoff以外でメガネを買う」をあげ忘れたのでここに記しておきます