シンデレラガールズ7thライブ名古屋公演に行った pt.2

前記事の続きです。(文中敬称略)

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ライブの話 (各演目編)

・ミラーボール・ラブ

Taku Inoue + MCTCの組み合わせは無条件全信用に値する。

トラックが最高なのは勿論のことだが、なにせ歌詞が良い。ミラーボールはその場で回り続けることしかできないし、自分から光ることもできない。「いつの日にかきみと一緒にわたしも!」と願うが、二者の距離は決して縮まらない、という関係がここでは歌われる。まさしく「衛星みたいなこのハート あなたの周りをグルグル回る」(電気グルーヴ 『Nothing's Gonna Change』)だ。山田尚子だ。ダンス音楽はその構造上、円環というモチーフ(用法正しいですか?)と非常に相性が良い。そういえばHotel Moonsideにも「降りたいこの環状線」という節が出てくる......

音源ではセンターが宮本フレデリカというもの良い。発する言葉は本当なのか嘘なのか、あるいはその両方なのか、そのどちらでもないのか、というニュアンスを感じさせるのに長けるキャラクターがダンスフロアにまつわる曲を歌うのは適任だと思う。またメンバーに及川"Throbbing Disco Cat"雫がいるのも見逃せない。ぜひ彼女のソロ曲はモロモロダーなエレクトロ・ディスコで......

わかる、わかるよ、おれも雫さんの「ミ、ラ、ア、ボォル!」はめちゃくちゃ魅力的だと思うよ

— MCTC (@m_c_t_c) November 3, 2019

今回のライブでは1曲目での披露だったため音響がこなれておらず本領発揮といかなかった感があるが、今後のライブでもキラーとして機能するだろう。

・空想探査計画

今回聴けると思ってなかったので嬉しかった枠その1。音源ではセンチメントがピークに達する『さよならアンドロメダ』の後でうまく流れを着地させる役割を担っていたが、当然それ以外の流れで聴いても素晴らしさが色褪せることはない。想像力がもたらす可能性が素朴に歌われる曲と木村夏樹/安野希世乃の衒いない歌唱の相性が最高だ。

・モーレツ★世直しギルティ! / Can't Stop!!

『応援歌の「お前」というフレーズが教育上云々〜』とかいう正しさの大脱臼(おおだっきゅう)の発生現場で『モーレツ〜』を聴くことに趣を感じつつ、まさかの上着投げ捨て直球セクシーにたじろぐ。片桐/堀/及川も和氣/鈴木絵/のぐちも良い意味で三枚目もしっくり来る稀有な存在感があると思っていただけに。

『Can't Stop!!』のジュリ扇ダンサーズでの存在感をはじめ、中島由貴がダンススキルで多大な貢献を見せていた。一人だけフレームレートが高くなってるような動きで、歌ってなくても目で追いたくなる。

Hotel Moonside

自分が初めてCGのライブを見たのが3rd二日目のLVだったため、この曲には大いに思い入れがあり過剰な期待とともに見てしまうが、それでも圧倒されてしまった。

飯田友子と髙野麻美によるパフォーマンス。こちらはこの二人の関係も知っているし、速水奏宮本フレデリカのそれも知っている。自分がこのコンテンツに惹かれる理由の一つにキャラクターと演者それぞれが積み重ねてきたものが相互に作用していく様の面白さがあるが、この人選はその相互作用が自分に大いに刺さるものだった。

立ち姿の群を抜いた美しさに加え、格段に上達したダンスと歌唱で完全に場を持っていった飯田友子の存在感にやられてしまいしばらく虚脱状態になってしまった(曲が終わった後会場もどよめいていた)。そしてラスサビ後に見せた髙野麻美の謎めいた笑顔もまた脳裏に焼き付いている。個人的な今回のベストアクトは間違いなくここだ。

・クレイジークレイジー

CGで一番好きな曲の一つ。目に映る退屈な光景とは裏腹の激情に心が引き裂かれる、「クレイジー」な状態がダンスビートに乗って表現されている。願わくばコーストくらいの会場でデカい音で体感してみたい。

・Last Kiss

曲調と原田彩楓の顔が好みすぎる。

・さよならアンドロメダ

得てしてドラムンベースは「アーメン鳴らしてナンボ」的な方向に振れがちであり、なおかつ曲のテーマも叙情的故、一歩間違えれば演歌やハードロックのようにやりすぎな仕上がりになってしまいそうな中、的確な音作りでそれを回避するTaku Inoueの手腕に舌を巻く。視覚的な演出やオリジナルメンバー以外の人選も含めてライブのハイライトの一つ。

・サニードロップ

K-POPはだしで踊りまくりながら歌う山下七海が強い。歌って踊る姿の映(ば)え方はピカイチで、他メンバーが「山下七海になりたい」と嘆息するのも頷けてしまう。

・Sunshine See May

ゆったりとしていて生楽器中心の音作りがされているが実はグルーヴ感のあるこの曲が、ダンス枠としてここで取り上げられるのは個人的には非常にしっくり来る。それにしてもライブで見るたびに思うが鈴木みのりは本当に歌が上手い。勿論上手いだけでなく、力強く歌ってもどこか爽やかさや優しさを感じさせる声質も素晴らしい。

・とんでいっちゃいたいの

今回聴けると思ってなかったので嬉しかった枠その2。前曲の『Sunshine〜』からのメロウな流れがたまらない。2曲続けて似たようなことを書くが、本ライブがダンス曲によるノリの良さだけに留まらない多面的な魅力を発揮できた要因の一つに藍原ことみの歌唱力があるではないか。一ノ瀬志希の「気まま故の魅惑」を歌唱にて完璧に制御し表現する力量には恐れ入る。

・もりのくにから

高橋花林はすごい声優だ、というのは彼女の参加する作品に触れた人は実感できているだろうし、デビュー前の経歴からもその片鱗が伝わってくるが、改めて今回のパフォーマンスを見て驚愕した。トラックと会場の演出はあれど、歌唱と朗読を行き来するような形で歌詞(手紙という体であり、曲の世界観の中ではあくまで森久保の私的な言葉)に息吹を与え、演者と観客の間にその場でしかない形での表現を成り立たせる。これぞライブというものだろう。

・2nd SIDE

前日がもう1曲の方だったのでやらないかな?と思っていたが聴けてよかった。この曲の魅力の一つに、ESTiの歌詞にみられる非日本語ネイティブ故の新鮮な表現があると思う。「今まで言えない秘密を 勇気を出して試すのさ」とか。

・Stage Bye Stage

最近レパートリーに加わった曲だが、ライブのエンディングにこれを持ってくるのは非常に良いと思う。過剰な感傷に浸らせない、軽快なグルーヴとメロディがこちらの気持ちを「楽しいライブだったな」というポジティブな地点にうまく着陸させてくれる。

 

ちゃんと言及したいことを全部さらったら書くのにものすごく時間がかかってしまった......最後に付け加えるが、「ダンス」というテーマに則ったライブであるなら『ススメ☆オトメ』は聴きたかった。選曲面での不満らしい不満はそれくらい。次回以降のライブはまた違った形のコンセプトに基づくだろうから、それがどんな面白い視点になるのかに期待しながら待ちたい。